Motor Activity Logについて知ろう−運動障害を有する手に対する介入的評価−
<本コラムの目的>
1. Motor Activity Logについて知る
2. Motor Activity Logの介入的な利用について知る
1. Motor Activity Log(MAL)とは?
この評価はTaubたちの研究グループが作成した運動障害を有する手の日常生活における使用に関する行動を評価するアセスメントです。この評価が登場するまでは、日常生活活動は、Functional Independence Measure(FIM)のように、手にかかわらない全身的な活動を評価するものしか存在しませんでした。
また、どちらかというと、その自立度を対象者が自分でできる程度を直接評価するのではなく、周囲の人間による介助量の大小により評価するものがほとんどでした。したがって、この評価が登場するまでは、運動障害を有する手に関する日常生活の評価は、対象者のコメントや療法士の観察による記述にとどまっており、数値化、客観化が非常に難しい状況でした。
そういった状況は、そもそも機能回復を促し、対象者が自ら活動する地盤を作るというよりは、介助者を含めて、代償手段を用いて、どれだけ介助量を減らし、社会復帰を早めるかといった、前時代のリハビリテーションに対する考え方を反映するものだったかもしれません。そういった意味で、この評価は現代の『機能回復を促し、対象者の主体的な社会参加を促す』といった現在のリハビリテーションにおける象徴的な評価なのかもしれません。
2. MALの実際の手続きについて
本邦では、14項目のMAL-14が一般的に使用されている。しかしながら、米国では、14項目の他に30項目や、もっと項目数が多いMALも存在する。これらが複数存在する理由としては、項目数において、用途が異なることである。
基本的に14項目のMALはアセスメントツールとして使用することが推奨されています。一方、30項目以上のMALは介入のツールとして使用することが推奨されています。介入に関する詳しい使用方法は『Constraint-induced movement therapy(CI療法)におけるTransfer packageの実際の手続き(2)−麻痺手に関する行動のモニタリングを促すための手続き−』で、先に記事化しているので、併せてご覧ください。
ここでは14項目のMALについて解説を行います。14項目の構成としては、表1に記載する通りであり、ADLに特化した項目がほとんどです。すべての項目において、脳卒中前に実施していた頻度(Amount of use)と動作の質(Quality of movement)(表2)を脳卒中発症前の動作における麻痺手と同様の手の使用に関する行動を100%とした時に、現在の動作はどの程度の頻度、使いやすさがあるのか、を0-5点の6件法で調査する評価になります。
一つだけ注意しなければならない項目としては、8の項目になります。この項目については、立位の最中に手すりなどを使用する場合、麻痺手をどの程度の割合で使用しているかについて評価する項目となっています。この項目に対する疑問が非常に多いので、そういった部分を評価していることをしっかりと理解をしておいてください。
また、項目12等で頻繁に見られるのですが、男性であったり、そもそも秀頭であることから、脳卒中発症前から櫛やブラシを使用していない場合は、そもそも項目から除外していきます。こういったルールもあるので、合算総合点で評価を示すのではなく、合算総合点を対象となった項目数で割り、平均点を記載することとなります。
参照文献
1. 高橋香代子,竹林崇,他. 新しい上肢運動機能評価法・日本語版Motor Activity Logの信頼性と妥当性の検討.作業療法28: 628-636, 2009