脳卒中後上肢運動障害に対するロボット『ReoGo-J』について

竹林崇先生のコラム
神経系疾患
リハデミー編集部
2025.06.30
リハデミー編集部
2025.06.30

<本コラムの目的>

1. ReoGo-Jというロボットについて知る

2. ReoGo-Jがどのような効果があるのかについて知る

1. ReoGo-Jとは?

 リハビリテーションロボット「ReoGo-J」は、脳卒中後に生じる上肢の麻痺や運動機能の障害を改善するために開発されたロボット支援装置です。この装置は、帝人ファーマ株式会社が製造販売していた機器です。現在は、販売は終了しています。この機器は、対象者が意図する動きを支援しながら、リハビリテーションの過程で繰り返しの動作を行わせることができ、神経の再生や可塑性を促進するとされています。

 ReoGo-Jの主な特徴は、患者が行いたい運動を補助し、その運動軌道をロボットがガイドすることで、運動障害を有する上肢のリハビリを効果的に行う点です。特に、麻痺している腕の動きが制限されている対象者でも、ロボットが正確な軌道で動きをサポートするため、運動機能を徐々に回復させることが可能です。また、対象者の個々のニーズに合わせたプログラムを設定できるため、適切な負荷と範囲でリハビリを行うことができます。


「ReoGo-J」は、以下のような機能を持っています。

多自由度の動き:肩、肘、手首など、上肢の各関節を連動させた複雑な動きに対応し、日常生活動作に近い運動を提供します。

反復運動による神経可塑性の促進:リハビリテーションでの反復的な動作を行うことで、脳の神経回路を再編成し、麻痺している部分の機能回復を目指します。

直感的な操作:対象者やセラピストが簡単に操作できるインターフェースを備え、リハビリの進捗に応じて動作の難易度を調整できます。

2. ReoGo-Jの効果について

 ReoGo-Jについては、2016年[1]と2022年[2]に「Stroke誌」に掲載された、2本のランダム化比較試験の結果が非常に参考になります。まず、2016年の研究では、一般的なリハビリテーションを提供した亜急性期の対象者において、追加でReoGo-Jを用いた自主練習を実施した群と従来の自主練習を実施した群にわけ、その効果を比較しています。その結果、ReoGo-Jを自主練習として使用した群において、優位な上肢機能の改善を認めました(図1)。

 また、2022年の研究では、一般的なリハビリテーションを提供した慢性期の対象者において、追加でReoGo-Jを用いた自主練習を実施した群と従来の自主練習を実施した群にわけ、その効果を比較しています。その結果、ReoGo-Jを自主練習として使用した群において、優位な上肢機能の改善を認めました(表1)。

 これらの試験結果は、ReoGo-Jを用いたロボット支援リハビリが、慢性期の脳卒中患者における上肢機能の回復に有効であることを示し、今後のリハビリテーションの標準的な治療法の一つとして期待されています。


参照文献

1. Takahashi, K., Takebayashi, T., Domen, K., Amano, S., Uchiyama, Y., & Hachisuka, K. (2016). Robotic Therapy for Upper-Limb Hemiplegia in Chronic Stroke Patients: A Randomized Controlled Trial of ReoGo-J. Stroke, 47(8), 1969-1976.

2. Takebayashi, T., Takahashi, K., Amano, S., Uchiyama, Y., Gosho, M., & Domen, K. (2022). Robot-Assisted Training as Self-Training for Upper-Limb Hemiplegia in Chronic Stroke: A Randomized Controlled Trial. Stroke, 53(5), 1402-1410.

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